心の指針ルーレット



【勇気と自信】

万の単位の人々の前で、
獅子吼しても動じない私が、
一番上がって緊張したのは、
一九八六年の第一回の発足記念座談会だった。
九十人にも満たない聴衆に向かって、
ありったけのことを二時間以上話し続けた。

後に郷里の母は、
その映像を、緊張しすぎている眼がかわいそうで、
とても見続けられない、と述懐した。
私自身も、正直に言えば、観ることも聞き返すこともできない。
素人の哀しさと、
プロの講演家として立つことの難しさが身に染みた。

それでも、何十万円かの活動資本金ができて、
一九八七年以降、法輪が転じはじめた。
雪の日の三月八日、牛込公会堂。
四百人ほどの聴衆の前で、
『幸福の原理』を説いたのが、
正式のプロフェッショナル宣言と、
教団の基本教学の始まりとなった。

最初から原稿もメモもなかった。
自分が本当に仏陀であるならば、
心の底から悟りの言葉が出てくると信じていた。
大雪なので、誰も来ないのでは、という不安を乗り越えて、
勇気と自信が全身に満ちてきた。

この第一回講演会の成功が、
教団創りの自信となった。
それから三十年近い歳月が流れて、
二千数百回の説法をした。
すべては『やってのける力』を信じることから始まった。

(心の指針126)

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