心の指針ルーレット



【仕事のコツ】

田舎に生まれ、
たいして才能にも恵まれなかった。
見た目が素敵ともいわれず、
家に財産があったわけでもない。
そんな私でも、
一時代が過ぎてみると、
ずい分、たくさんの仕事を、
こなしてきたではないかと、
言ってくれる人もいる。


あれは小学校の六年生の時だったか。
私の卒業文集に、
「アコヤ貝が、
砂やガラス片に苦しみながら、
虹色の真珠を作る」
その過程を作文にした。


小説家の伯母が、
老眼鏡を少し持ち上げて、
目がしらをぬぐった。
「あなたには、きっと、
何かがある。」
―そう苦労人の老作家は、
一言感想を語った。
あれから五十年も経ってしまった。
自分が二千数百冊もの本を、
世に送り出すとは思わなかった。


仕事のコツとは、
つくづく努力の継続だと思う。

(心の指針159)

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